posted 2022/08/5
故エドウィン・コパードと切っても切れない間柄であり、彼が遺したボディヴォイスの解析を中心となって推し進めた、株式会社エドウィン・コパード・ジャパン創業者である、影響力のスイッチを入れる専門家・賀集美和の単独インタビューを特別に無料公開します(全3回/#1、#2も)
前回のインタビュー#2では、常識破りのエドウィン・コパードの指導のエピソード、ボディヴォイスの技術化によって「スイッチを入れてもらう」から「スイッチを入れる」へ大転換したことなどを聞きました。今回は”ボディヴォイスのこれから”。どうぞお楽しみください。
起業なんて怖くて
インタビュー#1でお話ししたように、私はエドウィン先生に出会って「これは日本に必要だ!」となりました。当時の私は、アメリカに本社のある世界900店舗のレストランチェーンに籍を置き、人材開発の仕事で飛び回っていたので、外から見た日本が「なんかやばいな」ってなんとなく感じてはいました。
漠然とした感覚だったのでよくわからなかったのですが、エドウィン先生に出会ったことで、その正体がハッキリとわかってしまった。それは「日本という国が方向性を失っている」「日本人が方向性を失っている」でした。私を含め、私たちの祖国が根無草(ねなしぐさ)になっていると感じていたのです。
そこへ颯爽と(?)現れたのがエドウィン先生でした。「このカナダの辺境にいて1人で変なことしてるオジサン、この難題をまるっと解決する何かを持っている!」と、衝撃を受けました。
ならばそのお手伝いをしよう!と、日本人向けに言葉の壁を越えるために通訳したのが最初。そのうちにエドウィン先生はいつも日本にいるわけじゃないので、いない間にフォローアップが必須だ!と感じて、個人セッションや1日セミナーをできるようにしていった。その結果が起業という形になったという成り行きです。
起業は「100%ない!」と思っていたんです。子どもの頃、父が起業した会社が傾いて、夜中に母に「明日家が差し押さえられるかも」なんて怖い思いをしたので。
よりリアルになった生と死
エドウィン先生は、国籍も文化も異なる世界中のクライアントさんの変化を後押ししてきました。私はエドウィン先生がやっていた指導の日本語変換に力を注ぎ、10年以上指導と検証を重ねましたが、やはりボディヴォイスの効果は普遍的でした。
2019年には技術化・理論化・体系化し、誰でも簡単に使えるようにしたことでボディヴォイスに関われる人が増えました。
だから私が今、どうしても死ぬわけにはいかないし、140でも150歳でも生きたいし、それでもまだ間に合わないからもう1回生まれ変わってもいいかなと思う理由は、全然そういう人の数が足りないからです。
こんなんで次の子供たちに残せないです。日本にしてもアジアにしても世界にしても。とんでもない。私の魂は悔いが残って残って「恨めしや〜」って出てきてしまいそうです、今死んでしまったら。あと50年あっても足りない気がします。
残念ながらこれは謙虚さではなく、事実として申し上げると、まったく自分の影響が及ぶ範囲が足りなすぎます。決して怠慢ではないんですが、どうしても私という種(たね)の傾向というのがあって、慎重だったり深掘りしやすいものですから、「とにかくいいからまずはえーい、広めちゃえ!」とか出来ないものですから、わりと地味に地味に進んできています。
私は幸いなことに両親を自宅で看取ることができ、2人が息を引き取る、その最期の瞬間に立ち会いました。「息を引き取る」という日本語の持つ体感。昔の日本人にとっては日常だったのかもしれませんが、少なくとも私にとって身近ではありませんでした。あの静かな体験は、今の私の血肉になっています。
賀集美和・実父の手
エドウィン師匠との別れは衝撃の大きなものでした。当時私たちが住んでいた町で、私たちと一緒にご飯を食べた、ものの8時間ぐらい後に宿泊先で突然息を引き取り、帰らぬ人となりました。
その約3週間後にはご家族4名の来日が実現。特に奥様・シェリルさんを襲った衝撃は言葉に言い尽くせないものでした。文字通り世界中の人たち、それこそ民族や国籍の垣根を超えた、たくさんの方々の支援を受けてご家族は亡骸と再会することができました。
私たちは彼らの来日に向けて、時差を超えて関係各所との調整など不眠不休でお世話させていただきました。まさか日本の火葬場で、ご家族以外で唯一お骨を拾うことになるとは、、、縁としか言いようがありません。
その1ヶ月後には、義理の父も旅立ちました。何が言いたいかというと、死というものは私にとって今リアルだということです。
別の言い方をすると、死がリアルになればなるほど、生きることに対してものすごいリアルに、いい意味で執着が出ました。これは子どもの頃から「いつ死んだっていい」と言い続けていた私にとって、とても意外な心境の変化でした。
なものですから、諦めきれないんですね。もっとたくさんの人が、それぞれの持っている種(たね)、個性・能力を最大限に発揮している世界を。
今さらね、「多様性だ」「SDGsだ」ってチャンチャラおかしいですね。じゃないですか?自然を見たら多様性もSDGsもいつだってあったじゃないですか。流行りに乗っかって、殊更言うほどカッコ悪いなって思いません?アルファベットで言われたくないですよ、あんな頭文字で。日本人元々 Living SDGsですよ!
進化とはもともと自然なことで、みんな違うからこそ共創できる。そのスイッチがオフになってしまっているのだから、みんなで再びオンにしていきましょう!その道のガイドなら得意ですよ。ヒマラヤの山岳ガイド・シェルパみたいなものです、というのが私たちの変わらぬ立ち位置です。
ボディヴォイス for Professional
私たちは、起業家・経営者・管理職いわゆる社会的立場上リーダーと呼ばれる方々のガイド役であると同時に、変わらぬスタンスとして社会的な呼び名が何であれ「誰もがリーダー」であり、誰もが「自分の中のリーダーを呼びさます」ことが必須の時代背景であると言い続けてきました。
冒頭にお話しした「日本人が方向性を見失っている」とは、「意味を失っている」のと同じです。「働く意味」「生きる意味」を失っている。昭和や平成の「いい大学」「いい会社」「安心な老後」を目指す、ではもう辻褄が合わないんです。だったら自分で自分の方向性を示すしかない。
それぞれ自分なりの意味や方向性を示さず、他人の言うことを鵜呑みにしてるのに「どこが多様やねん」「それでどうやって共創すんねん」って話で(笑)。私はそれだと「つまんない」って思っちゃう性質なので、やっぱりこのまま死んだら「恨めしや〜」です。
とまあ面白い話はさておき(笑)。この(社会的立場としての)リーダーが対象の事業には、昨年(2021年)から新しい動きが出てきています。オリンピック選手などのプロ・アスリートへのガイダンス業務です。
当初は「メンタルトレーニングを」とご相談いただいたのですが、彼らと対話を進めていくうちに、アスリートとはいえ彼らも1人の人間で、より複雑化した状況に晒されており、現代のプロ・アスリートならではの悩みがわかってきました。
彼らの現役選手としての時間はとても短く、競技者として技術を磨くだけではない人生全体を見据えたうえでのガイド役を欲しているようでした。時代と共に変わるコーチとの関係性、競技に専念するがゆえの人間関係の狭さといった課題もあります。
また今の社会は、まだまだ多様性を活かせるような強さや弾力性を取り戻せていません。「国を代表する」立場ならではの周囲の期待や、時に暴力的なまでの「正しい」とされる意見を含め、どう自身の人生の一部にしていくのか。今後マスメディアやSNS情報との付き合い方など、様々な課題が出てくることも想定しています。
これらも結局は、私たちが長年培ってきた「自分の中のリーダーを呼びさます」につながっているので、私としてはやることはまったく変わりません。
アスリートからのご相談が舞い込んだ時、思い出したのはエドウィン先生との会話でした。確かカナダのご自宅で、スポーツ好きのエドウィン先生がテレビであるテニス選手を見ながら「この選手は試合の重要な局面でいつもメンタルで崩れる。優勝できるだけの力があるのに。ぼくが手伝ったら勝てると思う」と言ったのです。
何気ない一言だったのですが、私は「そうなのか!絶対エドウィンやった方がいい」「連絡取ろう!」と言いました。その時は実現しなかったのですが、時を超えて弊社でアスリートの支援が始まったことに感慨深いものがあります。
アスリートと一口にいっても本当に人それぞれです。何を目指し、どんなことに興味があって、どんな失敗の数々を経て、何に没頭したからその競技に卓越したのかは種(たね)によってまったく違います。
今の若い選手は世の中に貢献したい意識が強く、自身の競技以外への興味の対象も広い。そんな彼らだからこそ、持てる能力を最大限に発揮して自分の中のリーダーを呼びさまし、良い影響力を発揮していくのは嬉しいですね。
ボディヴォイス for Community
また、ボディヴォイスを技術化したことのメリットからも、新しい動きが生まれ始めています。
まず、これが根底にないと始まらないと思いますし、すごくうれしいのが「ボディヴォイスを大切におもう」仲間が増えていることです。技術化によって関わり方に幅が出た結果です。
当たり前ですけど、事業としてボディヴォイスそのものが価値であることはあり得ません。あくまでお客さまが喜ぶことで価値が生まれますが、この仲間の輪を少しずつ広げていけたらと思います。
先日も仲間と、技術としてのボディヴォイスの「型」について話していたのですが、「型」とは何か?「基礎」「マニュアル」「(ただ漫然と)反復する」などと何がどう違うのかなど、チームとして経験と議論を深めていきたいです。
エドウィン先生に「スイッチを入れてもらう」のではなく「スイッチを入れる」に大転換したボディヴォイス。自分でスイッチを入れられるようにしたからこそ、さらに共創を深めていくチームで在りたいのです。
ボディヴォイスに集まる方って真面目な方が多いんですね、一本気というか。私の影響が多分にあるかと思うのですが(苦笑)。だからこそ、自分でスイッチ入れられるようにしたからこそ、場の力を活かしてどんどん楽にスイッチを入れて、スイッチを入れた先にある「共に創ること」にエネルギーの軸足を移していきたい。
そういう「コミュニティ」なのか「寺子屋」なのか「道場」なのかまだわかりませんが、そんな場を創りみんなで叶えていきたいと思います。
そのなかから私と同じように、というか私以上のガイド役が育ったら嬉しいです!いや、きっと生まれるんじゃないでしょうか?いつの日か堰を切ったように。エドウィン先生の奥様シェリル(・コパード)さんも超の付く名ガイドですから、彼女にもぜひ協力を依頼しましょう!
彼女が「遠い異国の地で夫を失う」という大きな大きな試練を経て、さらに深みや逞しさを増して再び立ち上げるのは、まもなくだと感じるからです。
ちなみに「プロフェッショナル」と「コミュニティ」は、最初にどちらかを選ばなきゃいけないコースみたいなものというよりは、相互に補完し合うイメージです。
「プロフェッショナル」から入って「コミュニティ」で幅を広げたり、「コミュニティ」から入って「プロフェッショナル」で技を磨いたり専門性を磨いたり。相乗効果を生むものだとイメージしています。
これからの環境づくり
自然の中に行くのはそのスイッチを入れやすくします。なので、私たちはそういう自然が感じられる環境を選ぶようにしてきたんですね。セミナー・研修会場は、いわゆる会議室を選ばないんです。
これ見ていただきたいんですよ。エドウィン先生のカナダでやる時はですね、こういう環境です。バンクーバーから45分〜90分。手付かずの大自然が残り、サーフィンの聖地として有名なトフィーノという街です。移動にはプライベートジェットをチャーターすることもあります。
会場はロッジを一棟貸し切ります。オーナーが「ここはみんながスローダウンして、自然の一部に還る場所さ。ここ以外のどこに身を置こうといんだ?」と語るMiddle Beach Rodge。これはロッジ前に広がるプライベートビーチ。ここで6日間コースを10数回やりました。
これは日本で初めてエドウィン先生の6日間コースをやった時の。
やはり場所選びが大事で。だからこそいつも苦労するんですが。食べ物もジャンクなものも楽しみつつ、できるだけ自然のスイッチが入るようなものを用意します。
人って調和するんですよ。応援していけるんです、お互い違うのに。違いが際立てば際立つほど、お互いを理解し、応援し合わないでいられなくなるんです。認め合っちゃうんです。認めようと努力しなくても認め合っちゃうんです。認められるような言動をしないのに、認められちゃう。素の自分が受け入れられちゃう。
繰り返しになりますけど、これは「私は〇〇を信じています」っていう私個人の信念の話ではなく、検証済みの事実です。
経営者なら経営者自身がいつでも和を生み出せて、そういう場を周りに提供できるってことがめちゃくちゃ大事だと思ってます。じゃないと社員にいくら「チャレンジしてごらん」「言いたいこといってごらん」と口で言ったところでやるわけがないですよね。
そんなリーダーを輩出する場を、今私が住んでいる北海道に作りたいですね。私は昨年(2021年)、生まれ故郷の北海道旭川市に移住しました。本格的に帰ってきたのは何10年ぶりなのですが、生まれ故郷すごい!って感じです(笑)。
もうびっくりするぐらい穏やか。同じ北海道といってもゴチャゴチャした札幌と違って癒しのパワーがすごいです。都市と手つかずの大自然がめちゃくちゃ近く、旭川駅と旭川空港はそれぞれ家から車で15分。日本一広い国立公園までは、車で40分も走れば着いちゃいます。
あるクライアントさんには、「美和さんのやってることは体育館のような広い場所を使うレベル。身体動かして、ボディヴォイス出して、30〜40人でっていうのは絶対あった方がいいと思う」なんて言われました。
私も「買い取ろうぜ、みんなでそういう木でできた建物、体育館だとも見た目がよろしくないから。いてある程度「素敵〜」っていう場所、みんなで買い取るか作ろうよ」なんて返しています。
さっき申し上げたように、私には私の課題、葛藤があるんですね。正解がない時代のガイド役ですから、私たちも日々試行錯誤の連続です。思ったようにならないことだらけですよ!
でもエドウィン先生やエドウィン先生に大きな影響を与えた先生方、そのまた歴代の先生方がいらして私たちの背中をそっと押してくれます。いや、時にドンッ!と押されることも(笑)。もっとたくさんの人たちに、そのスイッチを入れるという人を輩出したいんですよ。
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